【身体の特徴に応じた学校制服】車いす使用の生徒さんの「困った」に寄り添う制服とは?

車いすに乗る女子生徒

制服販売店で働く40代のベテラン店員、NaNaです。
毎日、多くの生徒さんと保護者の方々が新しい制服を求めてお店にいらっしゃいます。希望に胸を膨らませた笑顔を見るのは、この仕事の醍醐味の一つですね。
でも、時には「この子、制服を着るのが大変そうだな」と感じる場面もあります。
学校生活を楽しく送るためには、毎日着る制服が快適なことが大切です。だからこそ、生徒さんの「困った!」に真剣に向き合い、できる限りサポートしています。

私が出会った「制服の困りごと」と解決策

私はこの仕事に就いて20年以上になります。その中で、さまざまな事情を抱えた生徒さんの制服に関するご相談を受けてきました。
一般的な制服の採寸や販売だけでなく、特別な配慮が必要なケースにも対応してきた経験から、今回は「どのような特別な対応が可能か」をお伝えしたいと思います。

【ケース1】車椅子を使っているAくんの場合

以前、小学6年生のAくんが、お母さんと一緒に中学校の制服採寸に来てくれました。
Aくんは車椅子を使っています。車椅子に座ったままだと、スラックスのウエストが食い込んだり、ジャケットが着にくかったりして、苦しそうでした。
「どうにかなりませんか…」と心配そうなお母さんの声もあり、制服メーカーに相談しました。
すると、車椅子の生徒さん向けに、いくつかの仕様を提案してくれました。

・スラックスのウエストゴム仕様
スラックスはベルトで、ウエストをしめますが、Aくんの場合はスラックスのウエスト全体をゴム仕様にすることで、座った状態でもお腹への圧迫感を軽減できました。これなら、お腹が締め付けられる不快感もなく、快適に過ごせます。

・ジャケットの背中ファスナー仕様
車椅子に座ったままだと、ジャケットを着たり脱いだりが大変です。
そこで、ジャケットの背中の中央部分にファスナーを取り付け、開閉できるようにしました。これにより、車椅子に座ったままでもジャケットの着脱も楽になりました。

Aくんとお母さんは、この対応にとても喜んでくれました。「これで安心して学校に行かせられます。」という言葉を聞いたとき、私も本当に嬉しかったです。

車いすに乗る女子生徒

【ケース2】アトピー性皮膚炎のBさんの場合

中学入学を控えたBさんは、深刻なアトピー性皮膚炎に悩んでいました。化繊(ポリエステル素材が含まれる)ブラウスだと肌がかゆくなってしまい、赤く炎症を起こしてしまうとのこと。
「せっかくの新しい制服なのに、肌が荒れてしまうのはかわいそうで…」と困り顔のお母さん。
肌に優しい素材で制服を作れないか制服メーカーに問い合わせました。

・肌に優しい綿100%シャツ
学生服メーカーさんによっては、肌が弱い生徒さんのために、シャツやブラウスの素材を綿100%に変更してくれます。
化学繊維が肌に合わない生徒さんにとって、天然素材の綿は肌への刺激が少なく、快適に過ごすことができます。
Bさんもこの綿100%のシャツに変えることで、肌のトラブルが軽減し、安心して学校生活を送れるようになりました。

【ケース3】手の不自由なCくんの場合

中学校に入学するCくんは、手が少し不自由で、ボタンの開け閉めが難しいというご相談がありました。
「制服のボタンを自分で留められないと、着替えに時間がかかってしまうのでは…」という心配をされていました。

・飾りボタン&マジックテープ仕様
ジャケットの前のボタンを見た目は普通にボタンをしめているように見えますが、そのボタンは飾りボタンで、その裏側にマジックテープが付いている仕様です。ボタンホールにボタンを通してとめる作業がなく、簡単にジャケットの前を開閉できるようになっています。
「マジックテープ」と「スナップ仕様」の2つをメーカーさんが提案してくれましたが、今回は生徒さんの希望でマジックテープにしてもらいました。
これで、Cくんは自分で制服の着脱が簡単にできるようになり、自信を持って学校に通っているということです。

学生服メーカーが対応できる制服の特別仕様

今回紹介した3つ以外にも、学生服メーカーでは様々な要望に対応できるようなノウハウ(知識や技術)を持っています。
私がこれまで見てきた事例や、メーカーから聞いた情報から、いくつか紹介します。

・座位保持装置使用生徒向けのスラックス
車椅子と同じように、座位保持装置(体幹の機能障害により自力で座ることが難しい生徒さんが、適切な姿勢で安定して座るための補助具)を使用している生徒さんのために、座った状態でも快適に過ごせるよう、スラックスの股上を深くしたり、お尻部分にゆとりを持たせたりする工夫ができます。

・関節が曲がりにくい生徒向けに、ゆったりとした袖口や裾
関節の可動域が制限されている生徒さんのために、袖口や裾を通常よりも広くしたり、伸縮性のある素材を使用したりすることで、着脱時の負担を軽減します。

・特定の装具(義手・義足など)に対応した調整
義手や義足を使用している生徒さんの場合、袖丈や股下の長さが左右で違うことがあります。
メーカーさんでは、装具の形状に合わせて、袖丈や股下の長さを左右で調整することができます。

・感覚過敏の生徒向けに、縫い目の少ないデザインやタグなし仕様
服の縫い目や品質表示のタグが肌に触れるのが苦手な生徒さんのために、縫い目を外側に出したり、タグの付ける位置を変える対応も可能です。

大切なのは「早めの相談」

一言で「制服」と言っても、その裏には生徒さん一人ひとりの学校生活を支えるための様々な工夫が凝らされています。
ただし、メーカーさんによって対応できることとできないことがあったり、特別な仕様の場合、通常よりも納期がかかることもあります。 なので「もしかしたら…」と感じたら、まずはお近くの制服販売店に早めに相談することをおすすめします。

まとめ

私たち制服販売店員は、採寸のプロであるだけでなく、制服メーカーさんとお客様の架け橋となる存在です。
お子さんの体の状況や、学校生活で困りそうなことなど、どんな小さなことでも構いませんので、ぜひご相談してみてください。